建築家に
兄、そして母の死後、アントニはすっかり気弱になってしまった父と、幼い娘を抱えた姉と引き取り、一緒にバルセロナで暮らすことにしました。
しかし、元から貧乏学生で生活は益々厳しくなり、彼はより一層バイトに励まなくてはなりませんでした。
当時の主なバイト先は、建築現場です。
そして、ここで彼は職人たちに交じってレンガを積み上げ、建築に直接携わるようになりました。
現場での経験、それは彼にとって、つまらない理論ばかりを並べる授業よりもずっとためになるものでした。
但し、学校では単位を取らないと卒業できないので、「授業は単位取得のため」と割り切り、学校生活を送りました。
この当時彼が出入りするようになっていた工房で、彼は若き鋳物職人、ロレンソ・マタマラと出会い、意気投合します。
彼らの友情は生涯にわたり続き、後に度々共に仕事をするようになりました。
アントニは、学校生活と仕事を両立する傍らで、様々な本も読みました。
それらは建築学に留まらず、経済、天文学、哲学など多岐にわたり、彼の感性を益々磨いていきました。
学生時代の彼は、仕事で疲れた体に鞭を打ち、夢の実現に向けて必死に走り続けました。
結局、数年の留年をしましたが、1878年、ついに卒業の時を迎えます。
合否判定される卒業制作で、彼は見事なパルテノンを造り、無事に合格しました。
こうして、学校卒業と同時に晴れて建築士になったのです。