グエル邸
グエルは「グエル別邸」を設計したガウディの才能に確信を持ち、すぐに次の仕事を依頼しました。
「グエル邸」の建設です。
後にこの作品は、ガウディ初期の最高傑作と言われるようになります。
しかし当時の彼は、どうしたら最高のものを造れるのか、日々その設計に頭を悩ませました。
ガウディはこの邸宅のために、放射線型アーチのデザインを取り入れる実験を重ねました。
それは、詩人ゲーテの「自然に直線は存在しない」という言葉にヒントを得たものです。
ガウディが、ここでも建築と自然の調和を重要視していることがわかります。
しかし、グエルの好みなども考慮に入れ、結局、20案以上が出来上がりました。
その中で、ガウディ自身が2案に絞り、設計図をグエルの元に持っていき、グエルが1案を選んだのです。
グエルが選んだものは、ガウディが実験を積み重ねて仕上げた放射線型アーチのファザードを持つものでした。
グエルとガウディの感性が一致した瞬間です。
ガウディは建築途中、何度もグエルと話し合いながら作業を進めました。
そしてその邸宅は、グエルとガウディの二人で築き上げた、二人の芸術論の結晶とも呼べるものに仕上がりました。
こうしてできた「グエル邸」(1889年完成)はまたも話題を呼び、新聞にも取り上げられ、建築家・ガウディの知名度を一段と押し上げることになったのです。