ワーグナー(Wilhelm Richard Wagner, 1813年5月22日~1833年2月13日)
ガウディは大の音楽愛好家でしたが、彼の建築哲学にまで影響を及ぼしたワーグナーの存在は別格でした。
彼が新米建築家の当時、バルセロナの富裕層の間で観劇が大流行していました。
その中でも、「オペラ」を発展させた「楽劇」を創始したワーグナーの作品について語ることは、一種のステイタスになっていたのです。
ガウディは建築家になるまで一度も劇場に行ったことがありませんでしたが、ワーグナーの「芸術論」を熟読し、やがてワーグナーの世界に心酔していきました。
彼が初めて見たオペラは、モーツァルトの「フィガロの結婚」です。
それから間もなく、ワーグナーの楽劇も鑑賞し、益々心酔していきます。
ワーグナーは、生前「劇こそが究極の表現目的であり、音楽、文学、建築などあらゆる芸術が融合されるべき」と論じていました。
そしてガウディは、自分の建築も音を奏でるようなものでなければならないと思いました。
彼は建築という表現ツールを使い、建築の中で総合芸術を目指したのです。
ガウディとグエルは、頻繁にワーグナーの総合芸術論について議論を交わしました。
そして、二人でいつか、「建築の総合芸術」を完成させると誓ったのです。
ゲーテの「自然論」もまたガウディが生涯大切にした建築哲学の要素ですが、彼は「自然論」に「総合芸術論」を融合させ、さらに奥深い建築を生み出すようになったのだと思います。