信仰と迷い
ガウディはグエルとの仕事の合間に2つの建築を完成させます。
「アストルガの司教館」(1893年完成)と「サンタ・テレサ学院」(1894年完成)です。
そしてその一方で、彼はサグラダ・ファミリアの主任建築士でもあり、多忙な日々を送っていました。
「アストルガの司教館」は、アストルガ市の司教から設計を依頼されたものです。
この頃のガウディは、相変わらず無神論者でした。
しかし、宗教建築を手掛けていると、自然と神父やカトリック教徒に出会う機会は増えます。
そして、彼らの優しい人柄に触れるたびに、彼はキリスト教に否定的なままでいいのか、頭を悩ませるようになっていきました。
彼は、神の宿る場所を、神など信じないという気持ちで手掛けていたのです。
そしてその悩みは、サグラダ・ファミリアに携わりながら、徐々にピークに達していきました。
彼は親しい高僧、トーラスとの親交の中で、徐々にキリスト教世界にのめり込んでいきました。
気がつくと毎日聖書を読み、芸術仲間と酒を酌み交わす場にも通わなくなっていたのです。
日々、自分と向き合い、そして神の声が聞こえる時を待っていました。
神の声を聞かなければ、自分が建築家として、これ以上仕事を続けることはできないとさえ思っていました。
そして1894年の復活祭を前にした時期に、彼は40日間の断食と祈りの修行を行う決意をします。