信仰への目覚め
1894年2月、ガウディは誰にも告げることなく、ひっそりと断食に入りました。
「四旬節」と呼ばれる、復活祭前に行う断食修行で、カトリックの修行の中でも最も厳しいものの一つです。
40日間一切食べ物を口にしないので、死ぬ者さえいます。
しかし、ガウディのカトリック信仰に対する思いは切実でした。
それまで宗教批判ばかりを繰り返してきましたが、そんな自分を悔い改め、一人の人間として、神に導かれたいと願っていたのです。
ガウディの断食を心配する人々が次々に彼のもとを訪れ、彼に断食をやめるように説得しました。
しかし、誰の言うことも聞きません。
結局、最後に断食をやめさせたのは、ガウディが最も信頼する神父の一人、トーラスです。
トーラスは瀕死とも呼べるガウディを目の前にして、「聖堂建築こそが貴方の天命だ」と告げました。
そして、生死をさまよう彼はその時、はっきりと神への愛を感じたのです。
彼は生まれ変わった自分を強く感じ、断食をやめ、建築に戻っていきました。
心から自分の使命を悟った彼は、その後、敬虔なカトリック信者として生きるようになり、ミサにも毎日通うようになりました。
1914年以降、宗教施設以外の建築を全て断り、サグラダ・ファミリアに集中するようになりますが、それまでの20年間で、個人の邸宅やグエルとの合作などを再び生み出していくことになります。