カサ・ビセンスの建築
ガウディが「エル・カプリッチョ」を手掛けたのと同時期に、ガウディの元に初めての建築依頼が舞い込みました。
タイル業者、マヌエル・ビセンスの夏用邸宅の設計です。
1878年に建築士の免許を取得して5年が経ち、ついに掴んだチャンスです。
彼は以前から、最初の作品はムデハル様式で造ると決めていました。
これは彼が学生時代に影響を受けた様式で、西洋建築がイスラム様式の影響を受け、進化したものです。
そして、このムデハル様式に、自然との調和を象徴する、あらゆる動植物のモチーフを加えました。
彼は一環して「装飾は、昔も今も、そしてこれからも色彩豊かなものである。何故なら、植物、地形、動物の王国にいたるまで、自然界で単色のものは存在しないからである」(トライアングル・ポスタル社「ガウディ」参照)と主張していました。
建築物もまた、色彩豊かなものにすることで、自然と調和すると考えたのです。
ですから、作品はひときわカラフルなものになり、いたるところに動植物をモチーフにしたものが散りばめられました。
外壁を飾るタイルは、仕事の依頼主がタイル業者であったため、思う存分使うことができました。
現場監督には、建築学校時代の友人、クリストバル・ガスカンテを指名し、ガスカンテはこれを引き受けました。
こうしてできた「カサ・ビセンス」にマヌエル・ビセンスは大いに満足しました。